西洋医学と東洋医学(中医学)のコラボレーションによる漢方専門クリニック|東京都千代田区神田小川町

千代田漢方内科クリニック|医療法人社団 千禮会
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逆流性食道炎、胃腸虚弱の漢方治療

症例について

 逆流性食道炎とは、胃十二指腸の内容が食道に逆流してQOLを低下させる疾患で、胸やけと胃酸の逆流が主症状です。治療にはプロトンポンプ阻害剤(PPI)が第一選択で強いエビデンスを持っています。細胞のH+分泌の最終段階のプロトンポンプを特異的に阻害して、H2ブロッカーより胃酸抑制効果が強力であり、胃や十二指腸潰瘍、逆流性食道炎などに効果的に使われています。確かにPPIによって食道炎は改善しますが、PPIは逆流性食道炎の根本的な病態である逆流を治すことが難しいです。
漢方薬には、食道と胃の蠕動運動を同時に改善させる働きをもつ方剤があります。特に、食道の順蠕動を改善させる新薬がありませんので、漢方方剤の臨床的な価値がより期待できると考えられます。
また、PPI製剤を長期的に使用することにより、消化機能を低下する傾向がみられることも臨床の現場ではしばしばみられます。継続的なPPI製剤の使用により食事を食べれなくなり、体力が低下して、生活のQOLが低下する症例もあります。そのほか、機能性ディスペプシア(胃の機能障害)が原因による胃腸疾患があります。この場合は胃の粘膜、十二指腸の炎症所見がなく、症状としては胸やけ、吐き気、胃のもたれ、胃の痛みなどです。これらの症状を改善するには漢方の健胃薬、補気薬がより適しています。 当院において、漢方方剤の服用により、逆流性食道炎、胃腸虚弱が改善した症例を紹介します。

症例1 55歳の女性の方

千代田漢方内科クリニック

 逆流性食道炎と診断され、朝食後にタケプロン15mg、朝・昼・夕食後にガスモチン、アルサミンを服用しています。2011年にピロリ菌を除菌した。萎縮性胃炎が所見が所々に見られます。
カレー、脂っこいものを食べないようにしています。睡眠の時には枕を高くして寝ていますがそれでも胸やけが治らないです。ゲップがよく出ます。苔薄やや黄じ、脈細沈。 処方:クラシエの半夏瀉心湯、ツムラの安中散。漢方薬を服用してから大分良いですが、天ぷらを食べた後に胸やけがひどくなることがあります。
長年、逆流性食道炎でPPC製剤を服用しており、萎縮性胃炎になっています。食事にはかなり気をつけています。やせ型で、疲れやすい。
タケプロンお服用が必要ないと考え、中止するようにしました。その後、タケプロンを止めてから食欲がでて、胃もたれも減り、大分元気になりました。現在は、クラシエの半夏瀉心湯、ツムラの安中散に戻して、概ね順調であり、快適に生活を続けています。

症例2 85歳の女性の方

 体力低下、舌炎。所見:舌が真っ赤になり、炎症起こしています。乾燥して、唾液がほぼないです。話すのもつらい、食べれない。胃の働きも弱くなり、ちょっと食べると胃が苦しくなります。頭はとてもクリアです。
薬手帳を拝見すると、眩暈、心不全の薬のほかに、オメプラール20mgが含まれています。処方された経緯を尋ねてみますと3年前に胃カメラ検査をしたところ、食道、噴門部に少し赤みがあるのでオメプラールを処方されたとのことで、その後3年間飲み続けています。次第に食が細くなっています。体力も落ちてきました。本来は胃腸の自覚症状がなかったとのことでした。
千代田漢方内科クリニック 80歳を過ぎた小柄で聡明な女性です。脾胃の力が弱くなってくる年齢であり、胃酸を薬により抑えていることにより、段々食事が摂れなくなり、このままでは今後、栄養失調で体が弱くなっていくと考え、オメプラールの服用を中止することにしました。
タケプロンお服用が必要ないと考え、中止するようにしました。その後、タケプロンを止代わりに、漢方方剤であるクラシエの半夏瀉心湯、ツムラの安中散を処方しました。2週間後に、再診で来られた時は大分元気になり、食事が摂れて、舌のヒリヒリした痛みがなくなり、笑顔が見られました。
漢方治療を継続して半年が経過し、体は見違えるように元気をとり戻し、一時は身辺整理をしようと思ったほど体が弱くなりましたが、今は大好きな洋裁を始めるまでに回復しました。

考察

 症例1、症例2の二つの症例ともに、PPIを中止することにより胃の自覚症状が改善され、萎縮性胃炎の所見も改善された症例です。
胃腸が虚弱して、食が細い、胃がもたれやすい、脂っこいものが苦手、やせタイプの人に対して、これまで胃酸を抑える薬を長期に渡り継続投与している傾向があるように思います。
逆流性食道炎の治療は、PPI製剤の治療のほかには、漢方方剤による治療が考えられ、逆流性食道炎の治療により適した薬であるようです。それは胃、食動の順蠕動運動を改善して、逆流に対する原因治療ができるからと考えられます。

中医学は、このような状況をどのように認識しているでしょうか?

千代田漢方内科クリニック

 中医学では、胃腸、消化器系全体の機能を、脾胃の働きによるものと認識しています。 脾気虚損とは、何らかの原因により脾気が不足している病態です。飲食の不摂生による脾の運化機能の失調、先天的な体質虚弱、あるいは慢性疾患による消耗、過労による損傷などが原因となります。脾気が虚弱になると運化の力がなくなり、消化不良をきたし、味覚も低下します。脾の運化機能が失調すると、気血の源が不足して、全体的に気血不足になるので、疲れ易くなります。
一方、脾の昇清作用が減弱すると、胃の降濁機能も影響され、腹部の膨満感、食後の胃もたれなどの症状があると同時に、下痢、軟便などの症状がでます。さらに続くと、脾気の昇挙の力が失われ、中気下陥となり、慢性下痢、内臓下垂などの症状を呈します。
のように中医学では、胃腸は"後天の元"と言われ、人は元気で健やかに生活していくためには、健康の胃腸が最も重要であると認識しております。