西洋医学と東洋医学(中医学)のコラボレーションによる漢方専門クリニック|東京都千代田区神田小川町

千代田漢方内科クリニック|医療法人社団 千禮会
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潰瘍性大腸炎の漢方治療について

潰瘍性大腸炎について

千代田漢方内科クリニック今回は、潰瘍性大腸炎(かいようせいだいちょうえん)という病気についてお話したいと思います。

厚労省に難病として認定されている「潰瘍性大腸炎」の患者数は、104,721人(平成20年度特定疾患医療受給者証交付件数より)と報告されており、毎年おおよそ5,000人あまりの増加の一途を辿っています。 発症年齢のピークは男性で20~24歳、女性では25~29歳にみられますが、若年者から高齢者まで発症します。男女比は1:1で性別による差はありません。
潰瘍性大腸炎とは、主として粘膜を侵し、しばしばびらんや潰瘍を形成する原因不明の大腸のびまん性非特異性炎症です。
医科学国際組織委員 (CIOMS)では「主として粘膜と粘膜下層を侵す、大腸特に直腸の特発性、非特異炎症性疾患。30歳以下の成人に多いが、小児や50歳以上の年齢層にもみられる。原因は不明で、免疫病理学的機序や心理学的要因の関与が考えられている。通常血性下痢と種々の程度の全身症状を示す。長期にわたり、かつ大腸全体を侵す場合には悪性化の傾向がある。」と定義しています。

いまだ病因は不明でありますが、現在では遺伝的因子と環境因子が複雑に絡み合って、なんらかの抗原が消化管の免疫担当細胞を介して腸管局所での過剰な免疫応答を引き起こし、発症と炎症の持続に関与していると考えられています。

使用される薬剤は多数ありますが、主なものには、5‐アミノサリチル酸製剤、ステロイド薬、アザチオプリンや6-メルカプトプリンなどの免疫抑制剤、抗生物質、整腸剤、下痢止め、抗アレルギー薬などがあります。または免疫抑制剤及び白血球除去の透析治療があります。しかし、残念ながら、まだ根本的に治すことのできる治療法は発見されていません。緩解期をいかに長く保つか、ステロイド薬など薬物による副作用を抑えながら大腸の炎症を効果的に抑えていくかなどが、大きな課題となっています
また、薬剤の効果が得られない、または薬剤アレルギーの患者さんもおられます。

潰瘍性大腸炎とは?

まずは、潰瘍性大腸炎の中医学的とらえ方からご説明致します。

「潰瘍性大腸炎」は、中医学では腸風(ちょうふう)または痢疾(りしつ)という病名に該当します。

原因は情志失調(ストレスや自律神経失調など)、飲食不正などにより内臓臓器の不調が重なって発症すると考えられていています。臨床の症状により大腸湿熱証、肝鬱脾虚証、脾虚失運証、腎陽虚衰証の病型に分けて治療します。

大腸湿熱証の特徴:
潰瘍性大腸炎の初期によく見られる病型で、腹痛、激しい下痢、排便してもすっきりしない、残便感、肛門付近に熱感を感じる、膿血便などの症状があります。

肝鬱脾虚証の特徴:
ストレスを感じたり、緊張したときにいきなり下腹部が痛み下痢になる、排便後は痛みが軽減する、わき腹が張ったり、食欲不振などの症状があります。
脾虚失運証の特徴:毎日何回も慢性的な下痢症状がつづきお腹がいつも張っていて、ゴロゴロ鳴ったりする、便に不消化物が混じる、食欲がなく、やせて疲れやすいなどの症状があります。

腎陽虚衰証の特徴:
長期間に及ぶ慢性的な下痢、粘血便、特に明け方や早朝に発作的な下痢がある、手足が非常に冷える、足腰に力が入らず立っているのもつらいなどの症状があります。
急性期は大腸湿熱型が多く、慢性期または寛解期は肝鬱脾虚、脾虚失運、腎陽虚衰が多いが、実際の場合はもっと複雑で混みあっていることが多いです。
個々の患者さんのその時の状態に合わせて証を弁別した上にオーダメイドな治療が必要です。

潰瘍性大腸炎の治療は?

千代田漢方内科クリニックそれでは、中医学的治療について詳しくお話いたします。
漢方による治療には、以下の2つの原則がございます。

治療の第一原則:
急性期は「腸垢有者有熱也」という認識があり、つまり腸に膿、粘血があれば、いかなる場合でも清熱解毒薬を投与するということになります。
舌苔が黄色で厚い湿熱タイプには金銀花(キンギンカ)を中心にした清熱解毒剤の葛根黄連黄ゴン湯(カッコンオウレンオウゴントウ)+清熱涼血止血剤(馬歯?(バシケン) 紅藤(コウトウ) 蒲公英(タンポポ) 金銀花 連?(レンギョウ) 負?草 白頭翁(ハクトウオウ)など)が基本です。
利湿の木香(モッカ)は黄連に合わせると香連丸(コウレンガン)になり、個人的には欠かさずに用いています。
方中の葛根は消炎解熱剤で、黄連と黄ゴンは腸管の炎症を抑えて下痢を止めます。発熱を伴う潰瘍性大腸炎の急性期に応用可能な薬方です。

治療の第二原則:
寛解期には、理中湯で温中健脾し、黄連で腸の湿熱の残った邪を除くという考えの下に、木香(モッカ) ?榔(ピンラン) 枳実(キジツ)などを併用します。
下痢が止まらず、治療困難な場合には、烏梅丸(ウバイガン)などが有効です。
烏梅丸は烏梅 細辛(サイシン) 川椒(センショウ) 附子(ブス) 干姜(カンキョウ) 桂枝 黄連 黄柏(オウバク) 当帰 人参などからなる方剤(調合した薬剤)ですが、人参、当帰などの補益剤は、「温中散寒」という治療方法です。
主薬の人参は、副腎皮質に働いて、副腎皮質ホルモン分泌を促し、また性ホルモン分泌も促進します。即ち強壮作用があるとともに、ステロイドホルモン様作用があります。さらに気虚の状態を改善して消化吸収を促進し、下痢を緩和する方向に働きます。
乾姜(カンキョウ)は消化管の血流を高め、結果的に脾胃の冷えを除く、再発予防につながります。

潰瘍性大腸炎の症例

ここで、実際に当院での症例をご紹介いたします。

S.Hさん 昭和41.12生まれの男性、会社員

22年5月13日に初診
平成8年、初めて潰瘍性大腸炎を発病、ぺンタサにて治療されました。一旦治癒したが平成13年に再発。プレドニン30mg、サルトピリン、アザニンで治療にもかかわらず、毎日7、8回の排便に血液、粘液を混ざり、腹痛が激しい。
担当医からは免疫抑制剤、及び血液透析で白血球除去の治療がすすめられたそうです。
本人は思い悩んまれたため、漢方の門を叩くため当院に受診されました。

弁証:湿熱内盛、脾虚肝鬱 
治療:清熱利湿止血、疎肝健脾

煎じ薬:オウギ、ケイシ、シャクヤク、コウイ、カンキョウ、ニンジン、ビャクジュツ、モッコウ、オウレン、トウニン、タイソウ、センカクソウ、サイコなどの生薬で一週間分を処方いたしました。

22年5月20日 に第二診
1日7、8回の血液便、粘液便のところ、今一日5回程度。
そのうち半分はガスのみ。腹痛はほぼ良くなられました。
効果を得ているので、同じ処方で14日続投。

22年5月27日 に第三診
排便一日3回、大分調子がよい。引き続き同じ治療。
現在、西洋医学の薬を中止して、漢方にみて症状もなく、過ごされています。