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中国医学では、「腎は耳に開竅(かいきょう)する」といいます。
開竅(かいきょう)とは竅(穴)を開くという意味で、内側にこもった邪悪なものを外に出すという事。簡単に解釈しますと腎は耳、つまり聴力に反映されやすいということを意味します。)

また耳は肝胆の経絡ともつながっています。急性の耳鳴りの場合は肝気鬱滞、肝火上炎などの肝胆に関係することが多く、慢性の耳鳴りは腎の精が虚弱するによることが多いと中医は考えます。特発性難聴など急性の耳鳴り、難聴は、西洋医学的に治療はまず行われるのが一般 的です。しかし、慢性の耳鳴や難聴に対しては効果的な西洋医学の治療がありません。
漢方は耳鳴りについて独自の理論と治療方法があり、ここで実際の症例を通 してご紹介いたします。

症例
A子さん(主婦、58歳)が突然の耳鳴りを訴えてこられたのは、半年前のことでした。
「急に激しいめまいが起きたかと思うと、耳が塞がったような感じがして、それから耳が聞こえなくなりました。驚いて耳鼻科にいくと、診断は突発性難聴。ステロイドとビタミンを処方されたのですが、2週間を飲んでもよくなりません。以前、更年期障害で漢方治療を受けたことがあり、今回も効くのではないかと思って来てみました。」

疲れた様子が気になり、最近、何かきっかけとなるような出来事がなかったかどうかを聞くと、「高齢で病気がちの母親を家に引き取って面 倒をみているのですが、そのことで妹と大喧嘩してしまいました。看病疲れと喧嘩によるストレスがかなりたまっていたかもしれません。そのせいか、もともと不眠の傾向があったのですが最近ますます眠れなくなり、いらいらしたり落ち込んだりと感情の起伏が激しいのです。」同時に頭痛もあり、血圧も上昇。ストレスがピークになったところでめまいと耳鳴りが始まったようです。

腎虚と肝気鬱滞が原因
A子さんの症状の根本には腎虚があります。
東洋医学の腎は、西洋医学の腎臓を指すのではなく、生殖器系、内分泌系、自律神経系などの生命活動を維持する基本的な機能全般 を表し、いわゆる老化現象は腎の機能を衰える腎虚の状態とみなします。

A子さんの場合も、更年期をきっかけに体力の低下がみられ、腰がだるい、体が火照り、のどが渇きやすい、睡眠障害などがあり、これらは腎陰虚(腎陰つまり体液や栄養不足している)と腎精不足(生命エネルギー不足)の症状と考えられます。
また、「腎は耳に開竅(かいきょう)する」といわれるように人腎精不足は耳に影響を与え、耳鳴りや難聴などの聴力障害を引き起こします。

さらに、看病疲れや喧嘩によるストレスは、五臓の中の肝に影響を及ぼします。肝気鬱滞(肝気の流れが滞る)と肝火上炎(肝気の鬱滞に熱が帯びて上に上がる)によって、頭痛、めまい、耳鳴りが起こったと考えられます。
治療の原則は「標治から本治へ」
中医学の治療原則の一つに「急ならばその標を治す(標治)、緩ならばその本と治す(本治)」(急性の場合は症状を治し、落ち着いたら根本の原因を治す)という言葉があります。
A子さんの治療もこの原則にのっとり、まずは『標治として、症状を抑えるために清肝瀉火・セイタンシャカ(肝の火を消し、熱を冷ます)の作用のある竜胆瀉肝湯(リュウタンシャカントウ)と、めまいを抑える半夏白朮天麻湯(ハンゲビャクジュツテンマトウ ) を加味した処方をしました。一週間飲み続けると、急激に症状が改善しました。体の火照りが少し治まり、耳の閉塞感やめまいもなくなり、耳鳴りも以前ほど気にならなくなったのです。
これらの薬は作用が強く、長く飲み続けると胃腸に負担かかったり体を冷やしたりするので、症状が七、八割ほど緩和したところで『本治』に移しました。腎虚に対する補腎の薬を中心に、肝気の流れを良くする穏やかな効き目の薬を補うことにしました。処方は、耳聾左慈丸・ジロウサジガン(補腎と難聴の薬)柴胡清肝湯(サイコセイカントウ)。一ヶ月後には、完治といっていいくらいに症状が治まりました。
 慢性の耳鳴りや難聴には補腎の薬が第一選択となりますが、脾気不足(消化吸収能力の低下)が見られる場合は胃腸の虚弱を改善する益気聡明湯(エッキソウメイトウ)、補中益気湯(ホチュウエッキトウ)を加えて処方します。
またストレスによる急性の症状に対して、A子さんのようにいらいらして怒りっぽいタイプには肝の火を鎮める竜胆瀉肝湯を用いますが、逆に抑鬱タイプの人にはストレスを発散させる加味逍遙散(カミショウヨウサン)、四逆散(シギャクサン)などが用います。

A子さんの治療を成功した背景の一つに、早期治療に取りかかれた点があります。
突然耳が聞こえなくなる突発性難聴は、西洋医学では原因不明とされていますが、精神的・肉体的疲労時や睡眠不足のときにおきやすい病気です。また朝食抜きなど不規則な生活も発症の危険因子となります。
 一般的に突発性難聴は発症後一?二ヶ月以内にきちんと治療しないと、聴力が落ちたまま固定してしまうと言われています。日常生活を改善しながら、いかに早く適切な治療を行えるかが大きなポイントとなります。
 耳鼻科のスタンダード的の治療は、ステロイド剤、血管拡張剤、ビタミンE、高気圧酸素療法などがあります。それで症状が治まればよいのですが、効果 が得られないまま何ヶ月も経ってから漢方治療に訪れる患者さんが多いのが現実です。


 一概に漢方治療だげでよいとはいえませんが、時期を逸しないよう、A子さんのように耳鼻科治療で思うような効果 が見られないときに早めに漢方治療に切り替えるか、耳鼻科と同時進行で漢方治療を進めるのがよいでしょう。

院長先生 当クリニックでは、東洋医学的にみた食品の特性を考慮し、食生活へのアドバイスも行っております。
耳鳴り・難聴対策に効果的な
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