25歳の会社員であるB子さんは、三ヶ月前の初診時には、顔が真っ赤に腫れ上がっており、首はひびが割れたようになり、痒みがひどく掻いたあとが一部ジュクジュクとしている状態でした。幼少より皮膚科でアトピー性皮膚炎と診断され治療を続けてきましたが、ステロイド剤の長期使用による副作用の恐怖から独断で薬をやめてしまい、症状が急激に悪化してしまったということでした。
さらに1ヶ月前に悪寒、発熱、頻尿などの症状があり白血球数も減少し、病院で腎盂腎炎(じんうじんえん)と診断されました。
一般的にステロイド剤を急に止めてしまうとリバウンドで症状が悪化してしまうことが知られています。本来は、先ずステロイド剤と漢方を併用して強い炎症状態を抑え、症状が少し落ち着いたところで、漢方薬の治療に移行していく方法がよりよいのですが、今回の場合は、ご本人の希望によりステロイド剤を一切使わずに漢方のみで根気強く治していくことにしました。

B子さんの場合は、体の中に余分な熱がこもっている状態(血熱、風熱)なので、まず、この熱をさまして毒を追い出す治療(清熱解毒)方針で、十五種類の生薬をブレンドした処方を組み立てました。漢方のいいところはその人の体質や症状にぴったり合った生薬を自由に使えることでシャープな効き目を期待できることです。
B子さんには、 熱をさまし毒を出す、血行をよくする、皮膚に潤いを与える、皮膚の防衛機能を高める、胃腸を強くする、痒みを止める、ストレスを発散しやすくする、便秘を解消するなどの作用のある生薬をブレンドしました。
これらを煎じて毎日服用してもらい、二番煎じを浴槽に入れて入浴剤として使ってもらうようにアドバイスしました。こうして、体の内側からと外側から、両方向から働きかけることが重要になります。アドバイス通
りにまじめに服用してくださったB子さんは、1週間を過ぎたころから痒みが徐々に減り始め、2ヶ月後には赤みもとれてきました。
しかし、今度は皮膚の乾燥が目立つようになり両腕と首がごわごわするようになってきたため、潤いを与える作用のある当帰飲子(とうきいんし)に数種類の生薬を加えた処方に切り替えました。現在は、空気が乾燥したり仕事のストレスがたまると悪化しがちですので、完治とまでは言えませんが、症状は安定しており漢方薬のみでアトピー性皮膚炎と上手に付き合われています。
アトピー性皮膚炎の治療で注意を要するのは、すでにステロイド剤を使用している場合、自分勝手な判断で急に使用をやめてしまうのは危険だということです。皮膚の症状が重症化したり、急激な副腎皮質ホルモンの低下による腎盂腎炎や白血球の減少などが見られる体に対するダメージが大きいといえるからです。ですから、医師の指導の下で様子を見ながら徐々に減らしていくのが、回り道のようでもステロイド剤からの確実で安全な離脱方法だといるでしょう。